おいしく、安全・安心な「環境保全米」で 美しい田園風景を未来へ – とれたて仙台 仙台の大地の贈り物

生産者インタビューNo.06
おいしく、安全・安心な「環境保全米」で
美しい田園風景を未来へ

【 仙台市宮城野区 】関内農園 関内清一さん

土や水がきれいな証。
多様な生き物が息づく黄金色の田んぼ

見渡す限りに広がる、黄金色の稲穂。その穂先を心地良さそうにトンボが舞い、足下では小さなアマガエルがぴょんっと稲の中へ。それらを狙うシラサギは人を警戒する様子もなく田んぼの中に降り立ちます。

そんな豊かな生態系が織り成す、美しい情景。しかし、これは決して当たり前の光景ではなく、約20年前から進められてきた環境に優しい米づくりの成果かもしれません。

ここは仙台の中心街から車で20分ほどの距離にある、岩切地区の稲作地帯。開けた大地からは、オフィス街の高層ビル群が望めます。この広大な田んぼの一画で、稲刈り機を乗りこなし、農道で待つ軽トラックの荷台に勢いよく「籾(もみ)」※を詰め込むのは、当地で50年以上お米を作り続けている関内清一さんです。

今期最初の稲刈りを終えた関内さんにお米の出来を尋ねると「どうでしょう。お米と相撲はとってみないとわからないんですよ」と笑いながら冗談を交えて、答えてくれました。

※刈り取った稲穂を脱穀した状態のもの。稲刈り機は、稲刈りから脱穀まで一度に行います。

周囲に先駆けて環境保全米に挑戦
小中学校の給食へ提供も

関内さんが管理する約15haの田んぼのうち、約5haで育てているのが「環境保全米」。一般のお米に比べて化学肥料や農薬の量を半分以下にして栽培する、環境に優しいお米です。

環境保全米の栽培により、稲が持つ本来の力を引き出すとともに、田んぼの水と土をきれいに保ち、生き物が住みやすい環境を守ることができます。それは近年盛んに提唱されている、SDGs(持続可能な開発目標)の達成にも繋がるものです。

「今でこそ環境への意識が高くなっていますが、栽培を始めた当時はエコやSDGsといった言葉もありませんでしたね」。安全・安心なお米が求められ、2000年代前半から開始された環境保全米の取り組みに、岩切地区では関内さんが周囲に先駆けて挑戦しました。

しかし、環境保全米は農薬の使用量が限られる分、ただでさえ『実るまで八十八回の手間がかかる』といわれる米づくりの負担が増えてしまいます。除草剤を減らすため、夏の暑い時期は特に田んぼの管理が大変です。毎朝夜明け前に起床して、田んぼの様子を見回り、水の量、草の長さ、肥料の必要性を確認しているそうです。「当初は『何でそんなお米を作っているの?』と、よく聞かれましたが、『どうせ作るなら環境に優しくて、安心できるものを』と思ったんです」。現在では、環境保全米は仙台市をはじめ、宮城県全域で育てられるようになりました。

関内さんが育てた環境保全米は、仙台市内の小中学校の給食で提供されます。子どもたちにとって、環境保全米のおいしさを味わいながら、地域の農業にふれることができる、貴重な食育の機会です。「やっぱり、子どもたちがおいしく食べてくれるのが何よりうれしいです。少しでも農業のことを身近に感じてもらえたらいいですね」。関内さんは穏やかに微笑みました。

子どもの頃から志していた農家の道
「おいしい」という声を心の支えに

岩切にあるご自宅の作業場で、「籾摺り(もみすり)」※の前に、乾燥させた籾をおもむろに口に含む関内さん。噛むことで、その乾燥具合を確かめているそうで、この方法は子どもの頃から行っているといいます。

※乾燥させた籾から籾殻を取り除く作業。これを終えたものが玄米になります。

代々続く農家に生まれた関内さんは、小学生の頃から、将来就農することを志していました。「小学校での作文にも農家になると書いていて。実際に18歳から農業を始めました」。

これまでの農家人生の中で、米価の下落時など何度も挫けそうになったと関内さんは振り返りました。その時、心の支えになったのが、お米を食べた人が「おいしい!」と言ってくれることです。「他県の人が、私が作ったお米を食べて『こんなおいしいの食べたことない!』と驚いてくれたこともありました。他にも毎年私のお米を買ってくれる人もいて、やりがいになっていますね」。

関内さんが育てている環境保全米の銘柄は「ひとめぼれ」。炊き上がりのお米はふっくら、ツヤツヤとしており、もっちりとした食感が特徴。旨みや甘味、香りなどのバランスが絶妙で、さっぱりした口当たりのため、どんな料理にも合う飽きのこないおいしさです。

「うちはずっと、ひとめぼれです。他のお米もおいしいですが、毎日食べるならこれですね」。さらに「お米は元気の源です!」と快活に話し、精力的に作業に当たる姿には強い説得力がありました。

農家として生涯現役を宣言
仙台のお米の魅力を、もっと多くの人に

現在、関内さんは75歳。周囲には90歳を超え、運転免許証を返納した後でもお米づくりに励む方もいるそうです。「農家に定年はありません。私もからだが動く間は、ずっと現役で頑張るつもりです」。

そう生き生きと活動する関内さんの姿を見て、現在は卸売市場で働くお子さんや、大学生のお孫さんも農家になることを考えているそうです。「農業の人手不足が進む中、もし自分の姿を見て、そう思ってくれたならありがたいですね」。

生涯を米づくりにかける関内さん。お米には、人一倍強い想いがあります。「お米は日本人にとって特別な価値を持ったものです。若者を中心にお米離れの傾向にありますが、もっと多くの人に仙台のお米のおいしさを伝えていきたいですね」。

時代が変わり、生活が変わっても、関内さんの想いは変わりません。今日も田んぼに足を運び、お米に向き合い続けます。

【 環境保全米 】

国が定めた化学肥料や農薬などの使用基準の半分以下で育てられ、第三者機関によって認証されるお米です。2000年代前半から安全で安心なお米づくりを目指す「環境保全米」の栽培が始まりました。その後、取り組みが宮城県全域に広まった結果、田んぼの水や土がきれいになり、一時は生息数が減少していたホタルやメダカといった生き物が増えていることが判明しています。生産者が手間を掛けて育てたおいしい環境保全米を食べることが、美しい環境を守ることに繋がるのです。

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