いつか仙台を「本州最北限のブロッコリー」の産地に。 夫婦二人三脚で取り組む新たな挑戦。 – とれたて仙台 仙台の大地の贈り物

生産者インタビューNo.07
いつか仙台を「本州最北限のブロッコリー」の産地に。
夫婦二人三脚で取り組む新たな挑戦。

【 仙台市太白区 】 小田嶋晃治さん 紘子さん

冬の澄んだ空気の中、
収穫最盛期を迎えたブロッコリー

米を中心に、さまざまな野菜が育てられている仙台市太白区の中田地区。その一角にある畑で、寒空の下、慣れた手つきで農作業に勤しんでいたのは小田嶋さんご夫妻です。

二人が収穫していたのは、ブロッコリー。大きな葉に守られるように実ったブロッコリーを包丁で根元から刈り取ると、その場でザッザッと、余分な葉を切り落とします。傍らには、ちょうど2つ分の畝をまたぐように手作りされた四輪の台車が。その上に載せられたカゴに、次々とブロッコリーが積み込まれていきます。

「収穫期には大体週3回、約35aの畑で一度に200個ほど、多い時には400個近く収穫しています」と説明してくれたのは、晃治さん。紘子さんとともに、仙台をブロッコリーの産地にすることを目指しています。

試行錯誤を楽しみながら
ブロッコリーの安定供給を目指す

代々続く農家に生まれた晃治さんは、宮城県農業大学校(当時の宮城県農業実践大学校)を卒業後、アメリカでの農業研修などを経て、2002年頃に就農しました。その後、2009年に結婚した紘子さんと米や西洋野菜などを栽培し、ブロッコリーの栽培に本格的に乗り出したのは2017年頃。その構想は2007年頃からあったと語ります。「冬場の作物として、差別化やコスト面などを考慮し、露地野菜であるブロッコリーに着目しました」。

そしてもう一つ、ブロッコリーを選んだ大きな理由が、本州最北限の産地としての可能性です。「仙台以北で冬場のブロッコリーの産地となっている地域はありません。仙台が一大産地になれば、東北や冬の北海道のマーケットに届けることができます。対象とするマーケットの人口を合わせると1200万人ほどで、これは東京の人口と同規模になり、大きなチャンスがあると思っています」。

東北などでブロッコリーがあまり作られていない最大の要因は、冬の厳しい寒さ。涼しい気候を好むブロッコリーは、愛知や埼玉、香川などが産地として知られており、また北海道でも多く作られていますが、収穫期は涼しい夏場です。そのため寒冷地でのブロッコリーの栽培については、データなどがほとんどないそうです。

「前例がないので耐寒性などを確認しながら、試行錯誤を繰り返しています」と晃治さん。これを聞いていた紘子さんは「でも、楽しいよね?」と返し、「わからないことを一つ一つ解決して、楽しみながらやっています」と答えてくれました。

二人は2018年に農協内にブロッコリー部会を立ち上げ、寒い中での栽培技術や販売戦略などの研究に努めています。病原菌にやられない、凍らせないなど、克服技術開発を行っている段階です。初めは2組ほどだったメンバーも、現在では9組まで増え、それ以外の組合や団体でも試験栽培が行われるなど、宮城県内で徐々に取り組みが広がっています。

寒さに耐えたほのかに甘いブロッコリー。
二人が辿り着いた「食べ方」の結論

ブロッコリーと一口に言っても、その品種は海外産を含めると100近くになるといわれています。ご夫妻がメインに育てているのは『おはよう』と『こんにちは』というユニークな名前の2品種です。

「どちらも品質が優れ、寒さに当たっても変色しにくいという特徴を持っていて、市場のニーズに適合する品種を選びました。また、ブロッコリー専門メーカーから仕入れた『アーサー』という品種も試していて、この土地の環境に合うブロッコリーを探しています」と晃治さん。

育てたブロッコリーの味わいについて尋ねると、二人は「おいしいよね」と声を合わせました。食感が心地よく、ほのかな甘味を感じられるブロッコリー。「トウモロコシと同じように、ブロッコリーは鮮度の高さがおいしさに直結する野菜です。そのため遠方から運ばれるものより、採れたてのブロッコリーの方がおいしくいただけます」と晃治さんは話します。

さらにおすすめの食べ方を伺うと、二人は顔を見合わせて笑い、紘子さんは「気の利いたことが言えないんですけど」と口を開きました。「ブロッコリーは、どんな料理にも合うので、もう覚えてないくらい食べ方を試しました。炒め物にしたり、パスタや味噌汁に入れたり、チーズをかけて焼いたり。ただ結局、茹でてマヨネーズをかけるのが、素材の味も感じられて一番おいしいかったですね」。これに晃治さんも「それ以上はなかったね!」と笑顔で同意していました。

壮大なビジョンを胸に、
仙台のブロッコリー栽培の可能性を広げる

今後の目標について晃治さんは「まず、この地域におけるブロッコリー栽培のマニュアルを作りたいです」と語りました。「技術を確立して、私だけじゃなく、他の誰でもマニュアル通りにやれば収穫まで行えるようなシステムにすることが第一目標です」といい、紘子さんも頷きました。

続けて、「将来は仙台をブロッコリーの産地にしたい」と晃治さん。その実現に向けて、次のように話しました。「例えば北海道では、昔はお米が採れませんでしたが、何十年も努力し続けた結果、現在では一大産地になりました。また、いちごも春が旬でしたが技術の進化によって冬の果物になり、味もよくなりました。そのように諦めずに挑戦を続ければ、いつか『仙台のブロッコリーが一番おいしい』といわれる日が来ることも不可能ではないと思っています」。

そう力強く口にする晃治さん。雪の影響を受けない国内北限エリアの仙台市でブロッコリー栽培の可能性を広げ、産地として成り立たせるために、紘子さんと二人三脚で、さまざまな課題を乗り越えていきます。

【 ブロッコリー 】

ほのかな甘味が楽しめ、クセやアクがないため、サラダやスープ、炒め物など、多彩な料理に使われる緑黄色野菜です。また、その味わいはもちろん、栄養が豊富なことも人気の理由の一つ。ブロッコリーに多く含まれるβ-カロテンやビタミンC、ミネラルには抗酸化力や免疫力を高める働きがあり、さらに食物繊維も豊富なため、整腸作用の正常化や血糖値の上昇抑制にもつながります。
ブロッコリーは収穫後も自らの栄養成分を使って成長するため、なるべく新鮮なうちに調理するのがおいしく食べるためのポイントです。

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