生産者インタビューNo.08
冬の厳しい寒さで甘味を増す、
仙台で古くから作られてきた、
ちぢみ雪菜。
【 仙台市太白区 】 伊深光さん 未知子さん
経験豊かな先輩のサポートのもと、ちぢみ雪菜を栽培
今にも雪が降り出しそうな厳しい寒さの中、畑に掛けられた鳥よけシートを外し、大ぶりの葉をつけた「ちぢみ雪菜」を収穫していたのは、伊深さんご夫妻。「朝は雪菜が凍ってしまうこともあるので、午後一番に収穫するんですよ」と穏やかな人柄そのままに、やさしい口調で教えてくれたのは夫の光さんです。
ちぢみ雪菜は、仙台を中心に宮城で古くから栽培されてきた野菜です。雪菜という名前は雪の降る時期に寒さに耐えて育つことから付けられました。ちぢみ雪菜の特徴でもある肉厚で縮んだ葉っぱは、寒さに耐えるために自らを縮め、糖分を蓄えることによるものです。
今回は、およそ10年ぶりに雪菜を育てたという伊深さんご夫妻に加え、豊富な経験からお二人に栽培のアドバイスを行った、近所に住む農家の佐々木昌孝さん(写真左)、菊地春利さん(写真右)にもお話を伺いました。
一つひとつ手作業で大切に収穫。
品質の確保に努め、納得のおいしさに
光さんは未知子さんとともに、仙台市太白区四郎丸地区にある畑で、ちぢみ雪菜を栽培しています。収穫時はとても大きい雪菜ですが、店頭に並ぶ時には、外側の葉を取るため、小さくなっています。「少しでも傷んだ葉は取らなきゃいけないんですが、それも普通においしいんですけどね」と未知子さん。12月後半から3月までの市場の開場日には、ちぢみ雪菜が約25株入る段ボールを15箱ほど出荷しているといい、「収穫はすべて手作業です。出荷が始まると、あまり休みがないので大変なんですよ」と語りました。
ご夫妻は以前、同じカーディーラーで、光さんは整備士として、未知子さんは事務員として働いていました。2002年に光さんは会社を辞め、代々実家で営んでいた農業の道へ進みました。
「それまで手伝いはしていましたがわからないことだらけで、佐々木さんや菊地さんに肥料の振り方など農業を一から教えてもらいました」と光さん。菊地さんは「畑の横を通る時に、ちょっと様子を見て、種をまく時期や肥料の量を伝えているだけですけどね」と話します。2012年頃からは会社を退職した未知子さんも加わり、米を中心に枝豆や大根など、さまざまな野菜を育てています。
伊深さんが久しぶりにちぢみ雪菜の栽培を再開したのは、例年冬場に育てていた白菜の価格が毎年下がり続けていることから。「数年前から他のものを作りたいと考えていました。その中で農協から雪菜の栽培を提案され、心配はありましたが挑戦することにしました」と光さんは語ります。「この辺りでは、ちぢみ雪菜を育てている農家が多いんですよ」と佐々木さん。光さんは今でも時折、佐々木さんと菊地さんに相談しているといいます。
「病気にならないよう水はけなどに気を付け、品質や生産量の確保に努めました。種蒔きの時期が早くて少し大きくなりましたが、味はいいと思います」と光さんは手応えを口にしました。
甘味の中に感じる、ほのかな苦味が絶妙。
おひたしや中華風など、さまざまな食べ方で
ちぢみ雪菜は霜が当たることで甘味が増します。「寒さが厳しくなるにつれて、ちぢみ雪菜の味が濃くなるんですよ。最近は甘味がグッと増して、いい味わいになってきましたね」と未知子さんは話します。
肉厚で軟らかい葉には甘味の中にほのかに感じられる苦味、また茎のシャキシャキした食感も魅力のちぢみ雪菜。「茹でたり、炒めたり、さまざまな食べ方があるんですよ」と未知子さん。「我が家ではツナと炒めたり、おひたしにして塩昆布と和えたり。娘はごま油と鶏ガラスープ、にんにくで和えた中華風の食べ方がお気に入りです」。これに佐々木さんは「やっぱり、定番のおひたし」、菊地さんは「ベーコンと炒めるのもおいしいですよ」と続けました。
来季も引き続き、ちぢみ雪菜を栽培する予定だという伊深さんご夫妻。未知子さんは「思い思いの食べ方で、おいしく味わってほしいですね」と語り、光さんは「雪菜をはじめ、なるべく地域で採れた新鮮な野菜を食べてほしいですね。そして、仙台の農業がもっと盛り上がって、仙台の野菜のおいしさが広まればうれしいです」と、今後への期待を語ってくれました。
【 ちぢみ雪菜 】
中国の「タアサイ」系統の野菜を、日本で品種改良した冬野菜です。雪菜の中でも、5度以下の気温に10日間以上当てたものが「ちぢみ雪菜」として収穫されます。
寒さに強く、冬場には霜に当たることで、甘味が増します。甘味の中にほのかな苦味が感じられ、葉は柔らかく、茎はシャキシャキとした食感で、さまざまな調理方法で食べることができます。
また栄養が豊富で、β-カロテンやカルシウム、ビタミンCなどが多く含まれているのも魅力です。