女性が活躍する農業を。 強い思いを抱き育てる、 栄養満点の夏野菜「ツルムラサキ」 – とれたて仙台 仙台の大地の贈り物

生産者インタビューNo.11
女性が活躍する農業を。
強い思いを抱き育てる、
栄養満点の夏野菜「ツルムラサキ」

【 仙台市青葉区 】 佐藤とみさん

「私に一番“合う”野菜」
仙台のツルムラサキ栽培の先駆けに

夏の照りつける日差しの下、仙台市青葉区上愛子地区にある畑で、黙々とツルムラサキの収穫を行っていたのは佐藤とみさん。親蔓(茎)に手際よくハサミを入れながら「親蔓、子蔓、葉っぱと、ツルムラサキは捨てるところがないんだよ!」と教えてくれました。

ツルムラサキは、葉物野菜としては珍しく、夏季に旬を迎えます。現在、宮城県は国内トップクラスの生産量を誇りますが、佐藤さんは周りで栽培する人が少なかった14、5年前からツルムラサキを作り続けてきました。「ほかの人と違う野菜を育てるのが好きなんです。まあ、へそ曲がりなんだね」と屈託なく笑う佐藤さん。「あまり手をかけなくても大きくなるし、私に一番“合う”野菜ですね」と話しました。

ツルムラサキの収穫を終えた佐藤さんは、畑の横にある作業場で出荷作業に。慣れた手つきでツルムラサキを約20〜23cmの長さに切り揃え、1袋に200gずつ詰めていきます。「今年は気温が高くて、雨も多かったから、生育がいいね!」と出来に満足している様子。7月から10月、霜が降りる前までは収穫が可能なツルムラサキ。市場の開場日には20袋1ケースにして、4〜8ケースほど出荷しているといいます。

多彩な野菜を一人で栽培
農業委員として女性の農業参画に尽力

農作業中から取材を受けている時まで、常に生き生きとしている佐藤さん。自宅の敷地内にある畑やビニールハウスで、きゅうりやピーマン、仙台長なす、かぼちゃといった野菜のほか、菊やトルコキキョウといった花きなど、たくさんの種類の作物を、農家を継いでいる息子さんの手を借りることなく、一人で育てています。そのうえ、以前は市街地や農協の農産物直売所まで“振り売り”(※)も行っていたそうです。「一人で大変じゃないですか?」と伺うと「全然!悠々自適で楽しいですよ!」と、晴れ晴れとした表情で答えてくれました。「畑で野菜に向き合っていると、ストレスがなくなるんです。自分にとってこういう場所があって本当によかったと思っています」。

※収穫した農産物を都市部で販売して回る行商のひとつ

また、佐藤さんは、農地の適切な管理や地域農業全般の課題解決にあたる仙台市農業委員会の農業委員を務めています。現在19名いるメンバーのうち、女性の委員は佐藤さん含めて2名のみ。二人は担い手不足が進む農業人材の確保につなげるため、女性の農業参画をより活性化させようと積極的に活動しています。その取り組みの一つが女性生産者の交流会です。「女性生産者に声を掛けて、もう一人の女性委員がやっている農家レストランに集まり、みんなで近況の報告や悩みを話し合っています」。また、女性生産者向けにトラクターや耕運機の講習会なども開いているという佐藤さんは、そういった活動を通じて農業界全体の意識改革が必要だと考えています。

「女性は嫁ぎ先の親の介護を一人で抱えるなど、家庭を支える役割も大きく、農業生産の売り上げに直結しない部分を担うことが多いのです。一生産者としても女性が活躍できるよう、意識を変えていくことが必要だと考えています」と佐藤さん。近年は、若い女性から新規就農について相談を受けることもあり、徐々に女性生産者も増えているといいます。「農業に興味がある人は、ぜひ挑戦してみてほしいですね。まずは一鉢に花を育てるくらいから始めてもいいと思います。お日さまにあたって、土にふれて、自然の中で過ごしていると元気になりますよ!」。佐藤さんの姿は、まさにその言葉を証明しているかのようでした。

 

シャキシャキ、ネバネバとした食感
ほのかなえぐ味が食欲の湧かない夏にぴったり

「ツルムラサキは栄養がいっぱいあって、夏バテに効きますよ!」と佐藤さんが話すとおり、日差しをたっぷり浴びて大きく肉厚に育つ葉には豊富な栄養素が含まれています。またシャキシャキ、ネバネバとした食感と、山菜のようなほのかで爽やかなえぐ味は、食欲の落ちる夏にぴったりです。

佐藤さんのおすすめの食べ方は“おひたし”。「ほうれん草のように、さっと茹でてポン酢とかつおぶしをかけると、さっぱりしておいしいね」。ツルムラサキはアクが強いので、加熱して使うのがおすすめ。めんつゆとごま油の炒めもの、ベーコンとのソテーなど、多彩なレシピに活用できます。

今後について「挑戦したい野菜はいっぱいあるんです!その中で、たとえ値段が安くなくても買ってもらえるような野菜を作ることが目標の一つです」と佐藤さんは意欲満々。「そのためにも生産者一人ひとりが手間暇をかけて育てていることを、もっと多くの人に知ってほしいですね!」と希望を語る佐藤さん。持ち前のバイタリティで、これからもたくさんの野菜を届けてくれそうです。

【 ツルムラサキ 】

ツルムラサキは東南アジアが原産とされ、夏に旬を迎える葉物野菜です。宮城県は全国2位の高い生産量を誇ります。β-カロテンやビタミンC、カルシウムなど栄養が豊富で、刻むことでモロヘイヤのようなネバネバとした食感が生まれるのが特徴。店頭などで選ぶ際には葉と蔓がともにやわらかく、肉厚でツヤのある葉のものがおすすめです。

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