秋保の自然が育んだ牛乳&ジェラートを。 新たな挑戦を胸に、牛と向き合う。 – とれたて仙台 仙台の大地の贈り物

生産者インタビューNo.12
秋保の自然が育んだ牛乳&ジェラートを。
新たな挑戦を胸に、牛と向き合う。

【 仙台市太白区 】秋保柴田牧場 柴田耕太郎さん 香奈さん

秋保温泉のほど近くで酪農と和牛繁殖を営む
毎日のルーティンを大切に

“仙台の奥座敷”と呼ばれ、たくさんの観光客が集まる秋保温泉郷から、山形方面へ約3km進んだ場所にある秋保柴田牧場。酪農と和牛繁殖を営み、2棟ある牛舎には乳牛25頭、和牛20頭弱が飼育されています。「この牧場で酪農を本格的に始めたのは約50年前、私で3代目になります」と話してくれたのは柴田耕太郎さん。耕太郎さんは、高校と短大で農業を学んだ後、畜産関係の団体に就職し、約10年勤めた後、30歳の頃に就農しました。「前職で県内の若手農家と接しているうちに、徐々に自分自身でもやってみたくなったんです」とそのきっかけを語りました。

耕太郎さんの一日は朝6時の餌やり、搾乳から始まり牛舎の掃除等、季節によっては、飼料となるとうもろこし栽培や稲わらの収集や調整作業などを行い、夕方には再び餌やりと搾乳を行います。「人間は毎日いろいろな食材を食べる方が体に良いですが、牛は違います。お腹の微生物の活動などが不安定にならないよう、同じ時間に、同じ質、同じ量の餌を毎日与えることが肝心です。休みがないので、大変ですけどね」。耕太郎さんはそう笑いながら飼育について教えてくれました。

和牛の繁殖では、産まれた仔牛を2カ月ほど育てて市場へ出荷しています。乳牛と同じように餌やりの時間や量に気を付けているといい、「和牛の仔牛は餌や気温の変化ですぐに病気になったり、熱を出してしまうので、乳牛よりもデリケートです。より細やかに管理しています」と話しました。

乳牛が和牛を産む“代理出産”や仔牛のゲノム検査などにチャレンジ

日々のルーティンをこなしながら、新しい取り組みにもチャレンジしている耕太郎さん。その一つが、乳牛による和牛の“代理出産”です。「乳牛についてはミルクがよく出るように、できる限り1年に1回仔牛を産ませるようにしているんです」。その際、乳牛に和牛の受精卵を移植して、乳牛から和牛を産ませることがあるといいます。その意図について耕太郎さんは「乳牛の雄はミルクを出せないため、産まれても最終的に和牛と比べて価値の低い肉牛になってしまいます。乳牛を代理母にして和牛を産ませることで、確実に収益につなげることが狙いです」と説明しました。

さらに乳牛の改良にも着手。生まれたての乳牛のゲノム検査を実施し、乳牛として優れた個体を選抜することで、その後の繁殖などに役立てようとするものです。耕太郎さんはこれらの新しい試みに、手応えを感じ始めているといいます。「ゲノム検査はアメリカやカナダで始まった研究なのですが、日本の技術は後れを取っています。前職で築いた若手農家とのネットワークをいかし、積極的に情報交換をすることで、最新の情報を得られるようにしています。すぐに目に見えて結果が出るものではありませんが、徐々によくなってきている実感はあります」。

 

また、耕太郎さんは2022年7月に搾りたてのミルクを使ったジェラート店「KOMOREBI gelato」を開店。それは「秋保をもっと盛り上げたい」という地域への想いからです。「もともと秋保は平坦な土地が少ないので、あまり酪農に向いていません。実際に酪農家はうちを含めて数軒しか残っていません」と耕太郎さん。「そのため牧場の拡大や雇用という点では地域貢献できないので、他の方法を考えました。秋保には季節ごとにおいしい食材があるので、それらをジェラートにすることで、地域の魅力に目が向くようになると思ったんです」。その耕太郎さんの想いの込められた同店に足を運びました。

 

※ゲノム検査…ゲノムとは、遺伝子と染色体から合成された言葉で、DNAのすべての遺伝情報のこと。遺伝情報を分析し、将来的な収益性を予測するもので、乳牛のゲノム検査では、乳量や乳質、病気リスクなどを読みとり、収益性を評価する。

搾りたての濃厚なミルクと、秋保の季節の味わいを楽しめるジェラート

牧場から車ですぐ、木々に包まれるように佇む建物が「KOMOREBI gelato」です。「景色を見ながら、秋保のスローな雰囲気を感じてほしいですね」と話すのは、この店を担当している耕太郎さんの妻・香奈さん。スタッフのほとんどは秋保に住む主婦の方だといい、「生乳の仕込みなど意外と力仕事が多くて大変ですが、私もスタッフもお客さんとのコミュニケーションを楽しみながら仕事に当たっています」と話しました。

ジェラートの味わいは、常時10種類ほど。「フレーバーには、秋保ワイナリーのワインや宮城県産のフルーツなど、なるべく地域の素材を使用しています」と香奈さん。この日は秋保産いちじくのフレーバーもありました。その中でも不動の一番人気は秋保柴田牧場から直送される、搾りたての生乳を使用した「牧場ミルク」。牛乳本来のフレッシュで濃厚な甘味が格別の味わいです。

 

KOMOREBI gelatoがオープンしてから1年と少し。香奈さんはお店のこれからについて、次のように話してくれました。「もっと多くの人に牧場の新鮮な生乳をベースにしたジェラートを味わってほしいという想いもありますが、あまり欲張らずにお客さん一人ひとりとのやり取りの時間を大切にしていきたいですね」

私たちが当たり前のように飲んでいる牛乳ですが、日本では飼料代や燃料費などの高騰により、近年、酪農家の廃業が相次いでいます。生産コストが上昇する一方で、乳価がコスト上昇に追いつかない状況です。最後に耕太郎さんは「とても厳しい経営状況が続いていますが、おいしい牛乳をお届けするために酪農家みんなでがんばっています。ぜひ、牛乳をもう一杯飲んで応援してください!」と語りました。

 

 

 

 

 

【 牛乳 】

健康づくりをサポートする飲み物として、子どもの頃から飲む機会が多い牛乳。カルシウムが多いイメージですが、たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミンなど、私たちの体になくてはならない栄養素をバランスよく含んでいます。

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