おいしいリンゴを通して皆を笑顔に。 そして、もっと多くの人に、 根白石のリンゴ栽培を知ってほしい。 – とれたて仙台 仙台の大地の贈り物

生産者インタビューNo.13
おいしいリンゴを通して皆を笑顔に。
そして、もっと多くの人に、
根白石のリンゴ栽培を知ってほしい。

【 仙台市泉区 】 針生豊さん

仙台市の北西、泉ヶ岳の麓に広がる根白石周辺地区。この辺りでは昭和46年から本格的なリンゴ栽培が始まりました。現在は5軒のリンゴ農家が栽培を行っており、針生豊さんもその一人。二代目として引き継いだリンゴ園は、根白石の西側に隣接する西田中の森を切り開いた造成地にあり、収穫期になると約100本のリンゴの木が、徐々に赤色に染まっていきます。

手をかけるとその分おいしいリンゴになる。それがリンゴ栽培の面白さ。

先代がリンゴ栽培を始めた当初から、仕事の合間を縫って手伝っていたという針生さん。そのころから数えると、リンゴ栽培歴51年にもなりますが、「リンゴ園は継ぐ気はありませんでした。でも35年前に父親が亡くなったとき、放っておくと園内が荒れてしまうことが気にかかって。それなら維持だけはしていこうと始めたんです」と教えてくれました。

最初の25年は兼業農家として、仕事の傍らリンゴ栽培をしていましたが、「兼業だとあまりうまくはいかなかったですね。収穫量は今よりずっと少なかったです」と当時を振り返ります。

比較的時間が取れる仕事に転職し、その後仕事を退職して専業で携わるようになった現在までの10年間で、ようやく納得できるリンゴが作れるようになったといいます。「手をかければ、かけただけのいいリンゴができる」と、楽しみながら栽培を続けています。

有機肥料、減農薬で「おいしさ」を追求する。

針生さんが現在作っている品種は、人気のある「ふじ」のほか、「シナノゴールド」「さんさ」「紅将軍」など10種類あまり。中でも一番のおすすめは「奥州ロマン」といいます。「はじめて食べたとき、一口目から『おいしい』と思えました。丸っと一つ一気に食べられるのはこの品種だけ」とそのおいしさに太鼓判を押します。

針生さんは、有機肥料を使い、減農薬での栽培方法を実践。有機肥料は吸収速度が緩やかで、化成肥料の3~4倍の量が必要となり手間がかかるものの、リンゴの甘味を最大限に引き出すことができるのだそうです。

こだわりの一つとして、本格的な栽培の前に、必ず自分の農園で苗木を3年育てて収穫できたリンゴで味を確かめるといいます。「土の質や気候など、農園の条件でリンゴの味は変わります。ですから、実際に育ててみて、おいしいと思えたものだけを栽培するようにしているんです」。

また、木を低く育てることで、着色管理がしやすく、収穫作業の効率を高める「わい化栽培」にも取り組んでいます。「樹齢50年のものが今3本だけ残っていますが、あと数年で切ろうと思っています。土地の形状や日照条件を考えながら、木を植える場所も変え、わい化栽培を進めてきたおかげで、以前に比べると作業が楽になりました」。

5月から本格的な作業を開始。手をかけ、大切に育てるリンゴ。

「大きくて、見栄えが良く、おいしいリンゴ」を目指す針生さん。その1年間の作業の流れをお聞きしました。

<針生さんのリンゴ栽培>

5月        受粉作業

~7月 摘花作業

~9月    消毒噴霧(10~12日おきに計12回)、月に1度の草刈り

9・10月ごろ 根白石果樹生産組合での研修・勉強会

10月中旬~11月中旬 収穫

11月中旬 有機肥料の牡蠣殻石灰と発酵鶏糞を散布、剪定

毎年9・10月ごろには、周辺のリンゴ農家の5人で結成する「根白石果樹生産組合」で、リンゴ栽培の先進地を訪れる研修会を開催。現状に満足することなく、新たな技術や栽培の方法について積極的に情報を取り入れています。針生さんは近年、その研修で知ることができたという、薬品の付着率を高める「展着剤」を導入。展着剤を導入することで、薬品を効率的に使用することができ、減農薬につながるそうです。「おいしいリンゴ」を作るために、栽培方法の改良を重ねています。

多くの種類を少量ずつ生産している針生さんのリンゴは、すべて袋詰めにして主に「JA仙台農産物直売所 たなばたけ高砂店」で販売しています。納品したその日のうちに売り切れることもよくあるそうで、「いいと思ったものが売れると嬉しい」と、味の自信にもつながっています。

全国でも比較的リンゴ栽培が盛んで、2022年の生産量では全国9位となる宮城県(農林水産省「令和4年産りんごの結果樹面積、収穫量及び出荷量」)ですが、仙台でのリンゴ生産についてはまだまだ知る人が少ない状況。針生さんも「もっと多くの人に、根白石でリンゴを栽培していると知ってほしいですね。根白石周辺を散策して、リンゴの花や実を見て楽しんでもらってもいいと思います」と話します。また、「どのリンゴ農家も後継者問題は課題です。やってみたいという人がいたらぜひ手を挙げてほしい」と、現在抱える問題にも言及しました。

2023年の夏は酷暑によって、輪紋(りんもん)病にかかるリンゴが多く、収穫量は例年の1~2割減だったといいます。「来年は穏やかな天候のなかで栽培できることを願います。もっとみなさんにおいしいリンゴを届けたいですね」と話す針生さんは、これからも、よりおいしいリンゴを求めて味の探求を続けていきます。

※輪紋病…収穫期が近づいた果実に、輪紋状の病斑ができ、果実を軟化・腐敗させる病気。25℃~30℃の高温下で発病が助長される。

【 リンゴ 】

品種が豊富で日本では約2,000種、世界では約15,000種が栽培されているといわれています。国内生産量の1位を誇る品種「ふじ」は年間を通して流通。「1日1個のリンゴは医者を遠ざける」というイギリスのことわざがあるようにリンゴはコレステロールの吸収などを抑える作用がある食物繊維や、ナトリウム(塩分)を体外に排出し血圧の上昇を防ぐカリウムなどを多く含む栄養価の高い果物です。

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