仙台の農業を変えていく「今朝採り枝豆」 – とれたて仙台 仙台の大地の贈り物

生産者インタビューNo.01
仙台の農業を変えていく
「今朝採り枝豆」

【 仙台市若林区 】相原農園 相原康彦さん

日の出とともに収穫することが
「今朝採り枝豆」のおいしさの秘密

早朝、一面に枝豆の青々とした葉が広がる畑の中に相原康彦さんの姿がありました。収穫期を迎えた枝豆の成長を確かめながら、豆を傷つけないようやさしく、素早い動作で抜き取っていきます。夜も明け切らない4時半から収穫作業をしていたという、日焼けした相原さんの顔や腕には、朝陽に照らされた汗が光っていました。

収穫した枝豆をそのまま軽トラックに載せ、相原さんの自宅作業場へ。専用の機械を使いながらスタッフ4人で脱莢(だっきょう)を行い、さらに手作業による選別が行われます。袋詰めのあとはすぐに出荷先に向けて配送。その日のうちに、消費者が採れたてのおいしさをいただけるという贅沢な枝豆。これが「今朝採り枝豆」です。

一連の作業は、枝豆の旬となる7月から10月上旬まで、休むことなく毎日続けられます。「今朝採り枝豆」のおいしさは、生産者の日々の作業に支えられているのです。

農家の7代目として
働き方の改善や事業拡大に乗り出す

「今朝採り枝豆」のブランドを支えるリーダー的存在の相原さんは、代々農業を営む家に生まれました。農家の7代目として、仙台市内と川崎町内にある、山林と広大な田畑を守り続けています。「小さなころから家に働きに来る人たちがいて、大きい農家に生まれたことは感じていたし、家を継ぐことからは逃れられないとわかっていましたよ」と話しますが、専門学校卒業後にすぐに農業に就くことはせず、会社員として3年間働いたという経験も。その後、築150年の家を建替える際、「柱を建てる時に長男はいるべき」と説得されて家に戻り、本格的に農業を行うことになりました。

「見て育ったから、農業の良いやり方というのはわかっていた」という相原さんにとって、農業経営は改めて教えてもらうものではなく、身についていたもの。春は蕪と大根、夏は高原大根と枝豆、秋は秋大根と秋蕪という、相原家が作ってきた作物や土地をしっかりと継承していきます。その一方で、「30代になったころ、山の土地(川崎町)でいいものが採れなくなってきました。往復2時間の通勤時間ももったいないということもあって、仙台平野を栽培の中心にしていくことにしたんです。借りた土地も合わせて、仙台の畑を520アールぐらいに広げました」と、働き方の改善や事業拡大にも取り組んできました。

家族の協力のほかに、働き手も多く雇うことで、生産量を最大限に伸ばしていきます。「一日3時間しか睡眠時間が取れないこともあった」というほど、農業に没頭する日々が続いていました。

そんなとき、ある転機が訪れました。それは相原さんのお父様が体調を崩したこと、その後すぐに発生した東日本大震災でした。

農業復興の取り組みが
枝豆のプロジェクトへと発展

相原家では、震災の津波により畑のほとんどが塩害を受けたものの、幸いにも住まいや農業機械類の被害は最小限にとどまりました。市場への出荷に対応できるほどの量ではありませんでしたが、被害を逃れた作物をいち早く契約販売店に納品。塩害の対処を行いながら、2~3年をかけて出荷量を確保できるようになっていきました。

そんな中、塩害の影響がわかりやすく、収穫後の出荷調整の作業が屋根の下でできるため熱中症対策が取りやすいという理由から、枝豆栽培を手掛ける農家が増加しました。相原家も例外ではありませんでした。

時期を同じくして、仙台市では東部地域の農業の復興に向けた取り組みを進めており、その一つとして、野菜の収穫から出荷調整などの農作業のオートメーション化について検討していたことから、市の担当者が大規模に枝豆を生産している相原さんの農業機械を見学しました。その際にいろいろなお話を聞く中で、オートメーション化もさることながら、枝豆の付加価値を高めておくことの必要性に気づいたのだそうです。この「気づき」が、「仙台枝豆プロジェクト」のきっかけとなりました。

採れたての枝豆を、仙台市内の飲食店で収穫したその日のうちに食べてもらう―。その付加価値をつけることで、新たな販路開拓が可能になります。さらにプロジェクトに参加する生産者を募ることによって、安定した販売量を確保できる体制づくりを進めました。

本来は横のつながりがほとんどないといわれる生産者。そこで相原さんが持ち前の前向きな姿勢と、親しみのある人柄を活かして生産者を募り束ねていきました。「ただ声をかけていったんですよ。『仕事あるけどやらない?』『やる?』『よろしくね』。それだけです(笑)」。

今では若手生産者もプロジェクトに参加。畑にいる時にお互いに声を掛け合い、栽培方法や土の作り方について情報交換し、それぞれが切磋琢磨するような状況ができてきているそうです。「ここまで大きくなると思わなかった」という相原さんの言葉のように、徐々に「今朝採り枝豆」のブランドが浸透してきています。

「仙台市は緑が多くて、畑のすぐ後ろにたくさんの販売先のある100万都市が控えている。こんなにいいところはないですよ。地産地消が言葉通りできる場所。その形を作っていきたいですね。仙台市の人に安心できる作物が届けられるという自負を持って、若い人たちに農業の魅力をもっと見つけてもらいたい」と、相原さんは農業の今後の在り方についても見据えています。

【 枝豆 】

枝豆は、収穫した翌日 には甘みやうまみが半減する、鮮度が命の野菜です。
仙台枝豆プロジェクトでは、仙台市内で朝に収穫した枝豆をその日のうちにお店にお届けしています。生産地と消費地の近い仙台だから、生産者、流通事業者、お店が協力してできる期間限定の大作戦!それが 「今朝採り枝豆」なのです。

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