心にもからだにも環境にも優しいものを二人三脚で歩む有機農業の道 – とれたて仙台 仙台の大地の贈り物

生産者インタビューNo.14
心にもからだにも環境にも優しいものを
二人三脚で歩む有機農業の道

【 仙台市若林区 】仙台たんの農園 丹野 隆啓さん 優奈さん

「体の健康は“食の安全”から」
仙台で唯一「有機JAS 認証」取得

住宅と農地が入り混じる若林区沖野地区。収穫間近、黄金色に輝く田んぼで、仙台たんの農園の丹野隆啓さんが稲穂の状態を確認していました。隆啓さんは300年続く農家の11代目。妻の優奈さんとともに「心にもからだにも環境にも優しい」を理念に、米や花、トマトやトウモロコシなどの野菜を有機栽培しています。仙台たんの農園は、農薬や化学肥料を使わない有機栽培において、国が定めた厳しい基準を満たす「有機JAS認証」を、仙台市内で唯一受けている生産者でもあります。

有機栽培は、「体の健康は食の安全性が大きく関わっているのでは」と考えた父の清隆さんが1993年から始めました。当時、周りで無農薬栽培に取り組む農家はなく、苦労したものの「必ず世の中のためになる」と挑戦を続け、2001年に米の田んぼで認証を取得。2014年からは、野菜や花の畑でも認証を受けています。

失敗も成功も糧に
技術の確立へ成長続ける

隆啓さんが就農したのは2009年。父の苦労を見ていた少年時代は「米作りは絶対にしない」と考えていましたが、信念をもって農業を続ける父の姿に感銘を受け、今ではすべての田んぼを引き継いでスキルを磨いています。

有機JAS 認証は、毎年認証機関による検査を受ける必要があり、更新にかかる事務作業も膨大です。それでも隆啓さんは「独りよがりにならずに、自分を高めていくうえでも重要なことなんです」と、それも意見や知識を吸収できる貴重な機会だと捉えています。

今年の米は一部で思い通りの出来にならなかったそう。悔しい思いの一方で、冷静に原因を探り「この経験を必ず来年に活かす」と力強く話します。「失敗も成功もすべてが糧。まだ技術の確立には至らないですが、毎年確かに積み重ねています」と話す瞳からは、妥協しない信念が伝わってきます。

今年栽培した品種は「金のいぶき」「ササニシキ」「亀の尾」「いのちの壱」。常に挑戦し続けたいという気持ちから、珍しい品種も栽培。

有機栽培の「食べる花」を
生活のワンシーンに

現在、優奈さんは子育てをしながら、エディブルフラワー(食用花)の有機栽培にも挑戦しています。両親が花農家を営んでおり、花の栽培も学んでいる優奈さん。花を有機栽培することの難しさは誰よりも知っていますが、「夫が積み重ねてきたことと、自分ができることの2つをかけ合わせたら、より良いものができると思ったんです」と語ります。

優奈さんは、花の寄せ植えやリース作りのワークショップを主催している経験から、購入した方が自由に楽しむことができるよう、エディブルフラワーをブーケにして販売しています。「自宅でも、花瓶に挿して部屋に飾ったり、そこから花びらをつまんで料理に使ったりしています。子どもたちと一緒に過ごす中で、生活に溶けこむ花の美しさや楽しさに改めて気付かされることもありますね。子育てから得た経験も農業に活かしたいと思っています」と優奈さんは話します。

エディブルフラワーとしてマリーゴールドやジニア、キンギョソウなど色とりどりの花を栽培

誰に対しても
誠実な農産物を

有機栽培は、生育に時間がかかること、害虫への対応や除草の大変さ、栽培技術が確立されていないことなど、隆啓さんは経験を積んでも、なお難しいと感じています。「正直、投げ出したいときもあります。続ける理由は、取引先のお店やお客さんが『おいしいね』と言ってくれる、その一点です」。

しかし隆啓さんは、有機栽培以外を否定する訳ではありません。「多様な栽培方法があるから良いと思うんです。境界線を引いて分けたりせず互いに認め合って、農業の世界を豊かにしていきたいです。有機農産物が“特別なもの”という認識ではなく、たまたま手に取って、食べたらおいしくてまた買おうと思ってもらえたらうれしいです」。優奈さんは「これからも私たち夫婦だからできることを大切にして、お客さんに対しても自分にとっても、誠実な農産物を届けていきたいです」と話してくれました。

【 有機JAS認証の農産物 】

有機JASマークは、太陽と雲と植物をイメージしたマークで、農薬や化学肥料などの化学物質に頼らないことを基本として自然界の力で生産された食品を表しています。有機食品のJASに適合した生産が行われていることを登録認証機関が検査し、認証された事業者のみが有機JASマークを貼ることができます。
仙台たんの農園の米は、仙台市内で唯一有機JASの認証を受けて栽培されています。米のパッケージラベルは、優奈さんがイラストを描いたオリジナルです。

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