生産者インタビューNo.18
「おたくの大豆が一番!」 心待ちにしてくれる人のために
【 仙台市泉区 】農事組合法人 泉
繊細な栽培管理の結晶 豆腐店に人気の「甘い大豆」
秋晴れの午後、泉区松森の大豆畑では農事組合法人※ 泉(以下(農)泉)が収穫作業の真っ最中でした。(農)泉は転作田約85haで大豆を栽培しています。総面積のうち半分以上で減農薬・化学肥料不使用の特別栽培を行い、宮城県の「みやぎの環境にやさしい農産物認証」を取得しています。
(農)泉の大豆は「甘い」と定評があります。豆腐の原料に使うと特に甘みが際立ち、宮城県内のみならず関東圏の豆腐店からも引き合いがあるそう。代表理事の柴田孝一さんは「良質な大豆を栽培するために、管理に手は抜かない」。大豆は水に弱いため、通常水田として使われる転作田では排水対策に特別な工夫が必要です。また収穫時期の見極めも重要。早いと茎にわずかに残る水分で粒が汚れやすくなり、遅れるとサヤが割れて実が落下してしまいます。農地ごとに状況が異なるため、柴田さんらは連日全ての農地を見回ります。地道で繊細な管理が、おいしさへと結実しています。
※農事組合法人:農業協同組合法に基づき農業生産について協業を図ることにより、共同の利益を増進することを目的として設立された法人
ニーズに応え特別栽培へ 肥料を求め10年の試行錯誤
(農)泉の前身は1990 年代から活動した農作業を受託する転作組合。農家が年によって米の代わりに大豆を栽培する際、組織で作業を請け負いました。活動規模の拡大に伴い、2017年5月に法人化し、組合員は現在11名です。
特別栽培を始めたのは、法人化と同時期でした。「社会のニーズの高まりと、自分たちも体にいいものを作りたかった」と柴田さん。減農薬栽培の苦労は除草と病気対策。「雑草はとにかく人海戦術で作業。病気は農業改良普及センターや農協からの情報をもとに発生前の予防に力を入れます」。ベテラン農家集団ならではの経験値と技術力が生きています。一方で肥料は難題でした。近隣にたい肥の調達先がなく、県北地域まで何度も足を運び検討しましたがコストに見合わず断念。10年の試行錯誤を経てたどり着いたのは、「魚かす」主体の肥料です。「作業性が良く、豊かな土壌作りができることがメリット。うちの大豆栽培によく合い、品質や食味が向上した」と話します。
コンバインで刈り取り、茎やサヤが外され、勢いよく大豆が流れ出す
使う人に喜ばれるやりがい さらなる品質と収量の向上を
特別栽培のやりがいは「豆腐店が『おたくの大豆が一番』と毎年心待ちにしてくれること」。店主が作業を手伝いに来るなど、交流も盛んです。使ってくれる店が全国豆腐品評会で最高賞を獲得したときは、組合員一同我がことのように喜んだそう。
今後目指すのは、品質の磨き上げと収量アップ。現在10aあたり約125㎏の収穫量を、200㎏近くまで増やすのが目標です。「何十年と大豆を作ってもまだ満足できない。使う人に喜んでもらう大豆を作るためにもっと知りたいし学びたい」と、さらなる高みを目指します。将来的な課題は担い手の確保。近年、ドローンを使った病害虫防除に若手を巻き込むなど、地域の農業を守り継承する取り組みが始まっています。
特別栽培の品種はミヤギシロメ。宮城県発祥の在来種で、極大粒で柔らかな香りと甘みが特徴。 農事組合法人泉の大豆を使った商品は、市内豆腐店「伊東豆腐店」「上村豆腐屋」「熊沢豆腐店」「兎豆屋」、「農産物直売所たなばたけ高砂店」などで購入できます。
【 大豆 】
大豆は枝豆を夏に収穫せずに、そのまま完熟させ茶色くなった秋に収穫したものです。一般的な黄大豆だけでなく、有色の品種もあり、黒大豆、青大豆、茶大豆など多岐にわたります。 「畑の肉」といわれる大豆は、からだに必要なたんぱく質や脂質を多く含む栄養価が高い食材で、 味噌、醤油、豆腐や煮豆等、日本の食卓に欠かせない食材や調味料に加工して食べられています。
