おいしく、楽しく、自分たちらしく。 仙台の夏を彩る「今朝採り枝豆」。 – とれたて仙台 仙台の大地の贈り物

生産者インタビューNo.20
おいしく、楽しく、自分たちらしく。
仙台の夏を彩る「今朝採り枝豆」。

【 仙台市若林区 】株式会社SENDAI FARM 代表取締役 佐藤 智哉さん

「一緒ならできる」と起業を決意

陽ざしが照りつけ、仙台市でも猛暑日となった7月下旬。若林区沖野の畑では、青々と茂った枝豆が一面に広がり、さやはふっくらと膨らんで収穫のときを迎えていました。そこに枝豆の収穫機を取り付けたトラクターで現れたのは株式会社SENDAI FARMのメンバーたち。和やかな雰囲気の中心には、代表取締役の佐藤智哉さんがいました。

SENDAI FARMは、2021年に智哉さんが高校・大学時代の後輩・佐藤清敬さんとともに立ち上げた農業法人。二人はそれぞれ代々続く農家に生まれ、智哉さんは薬品の卸売会社で働いたのち25歳で就農。一方の清敬さんは、大学を卒業後すぐに農業の道へ。一緒に水田の転作に取り組んだことをきっかけに、会社を設立することになったと智哉さんは振り返ります。「農家に生まれ、農業をずっと身近に見てきました。その中で、これからも仕事として発展させていくには、個人のままでは規模の拡大などが難しいと感じたんです。そこで『清敬と一緒なら』と会社を立ち上げました」。

立ち上げ当初は、毎日が手探りの連続でした。「私の実家は米農家で、清敬の方は花農家。野菜づくりの経験は浅かったんです。近所の農家の方に話を聞いたり、産地を見学したり、栽培方法をインターネットで調べたりして、少しずつ学んでいきました」。そのため作業時間も長くなりがちだったといいます。「気がつけば深夜まで作業していたこともよくありました(笑)。でも、支え合いながら楽しんで取り組んでいたので、辛さよりも充実感のほうが大きかったですね。楽しみながらやっていくことを大切にしています」。

「農業ベンチャー」としての挑戦

そんな前向きな二人の姿勢に惹かれたのか、SENDAI FARMには少しずつ仲間が増えていきました。現在は智哉さんと清敬さんのほかに、農業関連の仕事をしていた人や将来は独立を目指している人など、29歳から48歳までの4名が在籍。採用希望者も多く、いまは一時的に募集をストップするほどです。

「思った以上に“農業をやりたい”という人がいるんだと実感しました。ただ、始めるには設備投資も必要ですし、技術の内容も抽象的でハードルが高いんです。だからこそ、その壁をできる限り取り除きたいと思っています。技術をマニュアル化したり、作業場や休憩室にエアコンを導入したり、働きやすい環境を整えています」。

従業員の増加にあわせて、福利厚生や評価制度の構築にも着手。年末年始の休みに加え、日曜の固定休日や5日間の“旅行休暇”などを導入し、長く働ける仕組みづくりに力を入れています。「農家で曜日を固定して休むのは、とても珍しいと思います。でも、家族との時間やプライベートも大切にしたいので、“何があっても日曜は休む!”と決めました。ワーク・ライフ・バランスが取れるからこそ、農業も持続可能な仕事にできると考えています。これまでの農家にはなかった新しい仕組みを整えているところなので、まさに“農業ベンチャー”のような感じですね」。

「おいしさは正義」
“味”にこだわった枝豆で、食べた人を笑顔に

SENDAI FARMでは現在、約15haの農地で、枝豆をはじめブロッコリー、キャベツ、白菜、人参、カブ、ネギ、アスパラガスなど、季節ごとに多彩な作物を栽培。さらに、宮城野区岡田のハウスでは花苗や野菜苗の栽培も手がけています。「育てているのは、基本的に自分たちが食べたい野菜ばかりなんです」と笑う智哉さん。市内でも有数の収穫量を誇る同社ですが、何よりのこだわりは“味”だと言い切ります。

「私たちが一番大切にしているのは、“おいしさ”です。ずばり“おいしさは正義”だと思っています。味が良ければ自然と販路も広がっていくし、食べた人も笑顔になります。農家育ちの二人なので、野菜の鮮度や味の違いには人一倍敏感です。自分たちが納得できるものであれば、お客さまにも喜んでもらえるはず。そんな思いで日々の作業に取り組んでいます」。

こうしたこだわりは、もちろん枝豆にも。同社では約15haの畑で6月下旬の“初だるま”から10月の“秘伝”まで収穫時期の異なる9品種の枝豆を栽培。魚粕や米ぬかなどミネラル・アミノ酸を含む有機肥料を活用し、土づくりから徹底的にこだわっています。夏の暑さに負けないように、新しい技術や資材を取り入れるなど、工夫を怠りません。この日収穫していた“湯あがり娘”は、しっかりした甘さと爽やかな香りが特徴で、誰でもおいしく食べられる人気の枝豆だそう。智哉さんは「少量の水で茹でると旨味が逃げずにおいしく仕上がりますよ」と教えてくれました。

また、同社は「とれたて仙台プロジェクト」※にも参画。早朝に収穫した枝豆をすぐに脱莢(だっきょう)・洗浄・選別・袋詰めし、「今朝採り枝豆」としてその日の午後には店頭に並びます。「枝豆は鮮度が命です。収穫したその日に食べられるのは、本当に贅沢なことだと思います」。

※とれたて仙台プロジェクト……枝豆をはじめとする仙台産農産物のおいしさを知ってもらうプロジェクト。「今朝採り枝豆」は、仙台産枝豆の高付加価値化により生産者の収益向上を図ることを目的に、平成27年度より飲食店提供を開始。早朝に収穫、選別・洗浄した枝豆を、その日のうちに販売する。みやぎ生協や市内外の飲食店、小売店で提供されている。

この今朝採り枝豆は、市内の百貨店などでもすぐに売り切れてしまう人気ぶり。名前を覚えて、買いに来てくれるお客さんも増えているといいます。「直売所で販売していると、『この前のおいしかったよ!』『あのお店でも見かけたよ』と声をかけてもらうこともあって。本当に励みになりますね」。

智哉さんと清敬さんが名付けた「SENDAI FARM」という社名には、“仙台を代表し、地域の農業をリードする存在になりたい”という想いが込められています。「全国では毎年、約8万もの農家が減っていると言われています。仙台市は比較的ゆるやかな減少傾向ですが、いずれその影響は確実に出てくるはず。そのとき、仙台の農業の受け皿になれるように、人材や設備、作付面積などをさらに充実させて、地域の農業を支えられる存在へと成長していきたいです」。

【 枝豆 】

大豆を熟す前に収穫したものが枝豆。枝付きのまま茹でて食べていたことからその名がついたとも言われます。収穫した翌日には甘みやうまみが半減する、鮮度が命の野菜です。6月下旬から10月上旬まで「陽恵」「湯あがり娘」「夏風香」など、さまざまな品種が次々に店頭に並びます。良質なたんぱく質のほか、カリウムやカルシウム、葉酸、ビタミンCなどを豊富に含み、栄養満点です。 とれたて仙台プロジェクトでは、仙台市内で朝に収穫した枝豆をその日のうちにお店にお届けしています。生産地と消費地が近い仙台だからこそ味わえる「今朝採り枝豆」。期間限定のおいしさです。

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