生産者インタビューNo.22
岡田産の大豆と米で醸(かも)す『岡田産づくり』受け継いだおいしいみそを造り続けたい
【 仙台市宮城野区 】岡田生産組合 加工班
女性の力が息づくみそ造り ― 地域発の6次産業化
1年で最も寒さが厳しくな1月下旬、宮城野区岡田にあるみそ加工場では、仕込み作業の準備が始まっていました。「米も大豆も岡田産。どちらも一等級にこだわっています」と教えてくれたのは、岡田地区で集落営農(※)を行う「岡田生産組合」の加工班班長・東海林(とうかいりん)民子さん。


沿岸部に位置する岡田地区は古くから稲作が盛んな地区。岡田生産組合は例年、水稲約70haのほか、転作作物として大豆約130~140ha、大麦約40haを栽培しています。品種の混合を避けるために、水稲は「ひとめぼれ」、大豆は「タンレイ」に統一しているのが特徴の一つです。
組合では、1999年(当時、岡田転作組合)から、生産した大豆と米を使用してみそを製造しています。自然の力で発酵・熟成させる天然醸造にこだわった『岡田産づくり』は、まろやかな甘みがあっておいしいと長年人気を集めています。「大豆で何かつくれないかと考えたのが始まり。農家の女性が中心になって働く場所や、集まってお茶飲みする場所が必要だと思ったんです」と組合長の遠藤源二郎さんがみそ造りを始めたきっかけを話してくれました。

岡田生産組合は東日本大震災の津波により大きな被害を受け、沿岸部にあったみそ加工場も流失しました。しかしその3日後、遠藤さんは「みそ造りを再開しよう」とメンバーに声をかけ、翌年4月には内陸部に場所を移してみそ加工場を再建。『岡田産づくり』は地域の農業復興のシンボルとなり、周辺農家の復興に弾みをつけました。震災からの15年を、遠藤さんは「無我夢中でやってきた」と振り返ります。
(※)集落を単位として、農業生産過程の全部又は一部について共同で取り組む組織
味の決め手はたっぷり入れる米こうじ
『岡田産づくり』の原料は大豆、米こうじ、塩と実にシンプル。10月~4月の気温が下がる時期に仕込み、年間約7tを生産しています。一般的に、寒い季節に仕込むみそは雑菌の繁殖が抑えられ、発酵がゆっくり進んで味に深みが出るといわれています。仕込み作業は加工班のメンバー13人が交代で行います。年齢層は40~70代と幅広く、中には2世代での加入や、みそ造りがしたいという理由で加入した農家以外のメンバーもいます。
みそ造りは、前日から水に浸しておいた大豆を、ガス火の圧力釜でふっくらと蒸し上げることから始まります。蒸すことで、大豆本来の旨みや甘み、栄養成分が残るのだそうです。蒸し時間は季節やその日の温度などによって微調整。大豆が蒸し上がるまでに、使い終わった器具を洗う人、圧力釜の温度を確認する人、次の準備に取りかかる人など、全員がてきぱきと”あうんの呼吸”で作業を進めていきます。


3日前から仕込んでいたという米こうじは、大豆と合わせる前に手作業で1粒ずつパラパラになるまでほぐします。「大豆と米こうじの割合は1:1。米こうじの量が多いので甘みが出るんです。大豆も重要ですが、『岡田産づくり』は米こうじが一番の決め手なので、おいしい米こうじを作れるように、先輩から教えられた製法を守っています」と東海林さん。


大豆が蒸し上がったら、いよいよ仕込み作業です。圧力釜のふたを開けると、大豆の甘い香りがふわり。熱々の大豆をステンレス台に移し、扇風機の風を当てながらかき混ぜて温度を下げます。温度が下がったら米こうじと塩を投入。むらなく発酵するように総がかりでよく混ぜ合わせます。



十分に混ざったら、電動ミンチ機でつぶし、丸めて仕込み桶に詰める最終作業へ。空気が入るとカビの原因になるため、拳でギュッ、ギュッと押し付けるように詰めるのがポイント。これら一連の作業を3回繰り返し、1日で約380kgのみそを仕込みます。


仕込み作業は、1人が同じ作業をするのではなく、交代しながら進めていきます。これは、全員が全ての工程を覚えられるようにするため。こうして、先輩から後輩へと、みそ造りの技術が継承されています。
みそ造りを通じた交流で、地域の農業を未来につなぐ
仕込んだみそは、貯蔵庫で約8カ月~1年間発酵・熟成させます。その間、仕込み桶からみそを取り出してかき混ぜる「切り返し」の作業を3~4回行い、発酵・熟成を促進。貯蔵庫では加温などの温度調整を行わず、ゆっくり発酵・熟成させることで、米こうじの甘みと大豆のうまみが生きた、まろやかな風味と豊かなコクのあるみそに仕上げます。

休憩時間には、お茶を飲みながらおしゃべりを楽しみます。「『こういう漬物がおいしいよ』『こういう野菜がいいよ』とみんなで交流できるのもみそ造りの魅力です」と東海林さん。震災前から加入しているというベテランメンバーも、「うれしい、楽しい、幸せっていう気持ちでやっています」と満面の笑顔で話してくれました。

みそ造りの交流は地域にも広がっています。地元の岡田小学校や児童館などで行われる食育活動に協力し、加工班のメンバーがみそ造り体験の講師を務めています。「こどものうちに本物のみその味を覚えてもらえるのは最高なこと」と話すように、食育活動はこどもたちや保護者に『岡田産づくり』を知ってもらい、地域の農業に関心を持ってもらう絶好の機会になっているといいます。「『おいしいね』って声が聞こえたときはやっぱりうれしいです。大豆と米こうじ、塩だけで作ったみそなので、皆さんに安心して食べていただきたいです」と語ってくれた東海林さん。原料の栽培からみそ加工まで、たくさんの手間と愛情が注がれた『岡田産づくり』。これからも地域の農業のシンボルとして受け継がれていきます。

【 岡田産づくり 】
岡田生産組合が生産した大豆「タンレイ」、「ひとめぼれ」の米こうじ、塩のみを使用し、約8カ月~1年かけて発酵・熟成させた天然醸造のみそ。塩分濃度は一般的な「辛口みそ」に相当する12%前後。大豆とこうじの割合が1:1の「十割こうじ」で仕込んでおり、米こうじの甘みと大豆のうまみが生きたまろやかな風味と豊かなコクが特長です。JA仙台農産物直売所「たなばたけ」で購入可能です。
